細菌性腸炎

口から取り込んだ病原菌(細菌)が腸管で感染することにより、下痢、腹痛、血便、嘔吐、発熱などの腸炎症状を起こす疾患が細菌性腸炎です。腸炎には、細菌性以外に、ウイルス(ノロウイルスやロタウイルス)が原因となるものもあり、これらはウイルス性腸炎として区別されます(感染性胃腸炎のページを参照ください)。原因となる細菌は多数ありますが、子どもで問題になりやすいものに、病原性大腸菌、カンピロバクター、サルモネラ、エルシニアの4つがあります。それぞれの細菌に汚染された食品を食べることで腸炎を発症する場合がほとんどです(いわゆる食中毒というものはこれにあたります)。典型的な例としては、生の牛肉で病原性大腸菌(O157,  O26,  O111など)、生の鶏肉でカンピロバクター、生卵でサルモネラなどが有名です。感染してから、発症するまでの潜伏期間は菌によって様々です(表参照)。一般的に細菌性腸炎はウイルス性腸炎に比べて、腹痛や下痢の程度が強く、高熱になる場合も比較的多く、また血便がみられやすいことも特徴です。いずれの腸炎でも、治療は下痢に伴う脱水への対応が中心です。症状が軽ければ、対症療法(こまめな水分補給と整腸剤の服用)のみで数日で治癒しますが、脱水の程度が強ければ、点滴や入院治療を行います。抗生物質については、症状の程度によって使用を考慮します。下痢止め薬は、腸の動きを低下させ、結果として症状の悪化をきたす場合があるため、細菌性腸炎では原則使用しません。

原因菌

頻度

主な感染源

潜伏期間

多い症状

O157

多くはないが集団感染がある

井戸水、牛肉

35日間

腹痛、下痢、

血便

サルモネラ

多い

卵、牛肉、豚肉

1236時間

発熱、下痢、

血便

カンピロバクター

最も多い

鶏肉、卵、牛肉

17日間

発熱、下痢、

血便

エルシニア

散発例のみ

井戸水、豚肉

46日間

発熱、腹痛、

下痢

では、実際に日常診療でよく経験する、カンピロバクター腸炎と病原性大腸菌0157による腸炎について説明します。

カンピロバクター腸炎

カンピロバクターは、もともと鶏の腸管に多く存在する細菌で、精肉過程で鶏肉表面が菌に汚染されます。食用として流通している鶏肉の、実に60~70%がカンピロバクターに汚染されているとの報告もあります。火を通すことで無害になりますが、焼き鳥屋で鶏肉のタタキや、生焼けの串焼きを食べて感染し、2~3日後に発症するパターンをとてもよく経験します。同じ鶏肉を食べても、大人は無症状で、子どもだけが発症する場合も多く見られます。大事なことは、

 ① 大人になるまでは、生の鶏肉は食べない。

 ② 鶏の串焼きや唐揚げを食べる時は、火の通りを十分に確認する。

の2点です。

病原性大腸菌O157による腸炎

O157は家畜などの糞便中に見られる菌で、糞便や糞便で汚染された水、食物を介して、人の口に入りO157腸炎を起こします。O157の感染力は非常に強く、100個程度のO157菌が身体の中に入っただけでも、病気を起こしてしまいます(多くの食中毒では、100万個以上の菌が身体の中に入らないと食中毒は起こりません)。最も典型的な例では、O157に汚染された牛肉を、生あるいは加熱不十分で食べて、4~8日の潜伏期間ののちに、激しい腹痛を伴った水様便が頻回に起こり、まもなく血便が出ます。症状がよくなった後も、1~2週間腸の中に菌が残り、便の中にも出てきますので、消毒などの予防は続けて行う必要があります。O157腸炎が怖いのは、O157菌が出す“ベロ毒素”が溶血性尿毒症症候群(腎不全や貧血を起こす病気)や脳症を起こすからです。これらは治療が難しい危険な病気です。子どもは焼き肉やバーベキューでお肉を食べるときには、加熱具合を十分に注意することがとても大事です。