長引く鼻水

鼻水,赤ちゃん

4月から保育園に入園した1~2歳の子どもが、入園後から鼻水が出だして、夏ごろまでずっと続くということがよく見られます。典型的には、透明のサラサラした鼻水から始まり、次第に黄色い濁った鼻水となり粘っこくつまりやすくなっていきます。

乳幼児では鼻水・鼻づまりにより、夜間の不眠や哺乳量の減少、不機嫌やせき込み、嘔吐などの症状につながる場合もよく見られます。

長引く鼻水の原因

子どもが、鼻水が長引く場合には、いくつかの原因があります。

①抵抗力・免疫力の問題

子どもの鼻水の原因として最も多いものはかぜです。かぜは、かかるたびに抵抗力がついて、症状も軽く治りやすくなっていきます。ですので、子どもが成長する過程で、何回も繰り返しかぜをひくことで、かぜをひきにくくなり、かぜをひいても軽い症状ですむようになります。

しかし、乳幼児にとっては、かかるかぜがどれも初めてのかぜの場合が多いため、そのかぜウイルスに対する抵抗力(免疫)がなく、一旦かかると、鼻水などの症状が治るのに時間がかかり、症状も強く出やすくなる傾向があります。

乳幼児がかぜをひき、鼻水がみられる場合に、症状が落ち着くまでには、通常2週間以上かかる場合が多いと考えられます。

②複数のかぜに続けてかかりやすい

一説によれば、かぜの原因ウイルスは、細かく分類すると約200あるといわれています。それぞれのウイルスによる症状は、鼻水・咳・発熱と大差はなく、どれも一般的なかぜとして診断されます。しかし、ウイルスの種類が異なれば、それぞれに対してつくられる免疫は全く別のものになるため、Aというウイルスに対する免疫は、Bというウイルスには働きません。

特に保育所など、複数の子どもが集って生活をする環境においては、複数のかぜウイルスが混在している状況が考えられます。例えば、A,B,Cという3つのかぜウイルスに2週間おきに立て続けに感染した場合、鼻水が6週間治らないという状況になりますが、このようなことは、実際の保育所においては非常によくみられることです。

③副鼻腔炎の合併

副鼻腔炎,合併症

顔の骨の中(頬と両目の間、額の下の骨の中)にある空洞を副鼻腔と言います。その空洞は粘膜で覆われていて、それぞれが鼻のなかで繋がっています。新生児期の副鼻腔は直径1センチくらいでまだ鼻腔とはつながっておらず、2歳頃から発達し始めて、17歳頃にほぼ完成します。したがって、4歳頃までは副鼻腔炎はおこしませんが、4歳~6歳頃になると、副鼻腔の通路が広がり、構造上炎症を起こしやすくなります。

かぜをひくと、鼻の粘膜で炎症が引き起こされ、その炎症が副鼻腔内の粘膜にまで広がると副鼻腔炎となります。副鼻腔炎では、黄色~黄緑色の粘っこい鼻水が特徴です。かぜに伴って起こる副鼻腔炎を急性副鼻腔炎といいます。4歳~6歳の小どもが鼻かぜをひいた場合は、ほとんどの場合が急性副鼻腔炎を合併していると考えられます。また、子どもは鼻道が狭く簡単に分泌物がたまって鼻の穴がふさがりやすく、このことが、副鼻腔の炎症が長引き、鼻水が治りにくい要因となっています。

④アレルギーの関与

長引く鼻水の原因の一つとして、アレルギー性鼻炎があります。また近年アレルギー性鼻炎の低年齢化が問題となっています。

2歳未満でアレルギー性鼻炎を発症することは稀ですが、2歳過ぎても毎日透明な鼻水がいっこうに止まらない、目もよく痒がるなどの場合はアレルギーの関与を考えます。

治療

原因により、対応も変わってきます。

①乳幼児の繰り返す鼻カゼの場合(この場合が最多)

かぜ治療の基本は、対症療法になります。鼻水を軽減させるかぜ薬を使いますが、それで症状がすぐに落ち着くわけではありません。症状が出始めてから次第にピークに達して、そしてピークを過ぎると徐々にましになっていき、最終的には完全に治る。これが、おおよそ1~2週間の中で起きるのが通常のかぜの経過です。このかぜの経過が、お薬によって短くなることはほとんどありません。かぜ薬の目的は、治るまでの間のつらい症状を軽減して、体への負担(寝れない、飲めない、食べれない等)を少なくしてあげることです。ですので、日中の軽い症状程度で、夜はぐっすり寝れており、元気で食欲もあれば、体の負担もないため、お薬の必要性もないという訳です。

赤ちゃん,鼻水

鼻水がある場合には、たまると呼吸苦や不眠、せき込みにつながります。特に横になると、鼻腔に鼻水が溜まり、のどへ落ち込むことでせき込みにつながりますし、鼻づまりによる口呼吸になることで、喉が乾燥したり刺激を受けてたりしてせき込みを誘発する場合も多くみられます。

この症状には、薬はあまり有効ではありません。有効なのは、こまめな鼻吸引です。また、空気の乾燥が睡眠中のせき込みの要因となることもあるので、部屋の加湿が有効な場合もあります。

鼻水,吸引

<吸引機いろいろ>

鼻かぜの症状には鼻吸引が有効ですので、自宅に吸引機を置いておくと役立ちます。

鼻水吸引器,種類

市販の吸引機もいろいろありますが、スポイド式は吸引力が弱く、鼻腔の出口付近に付着している鼻水を除去する程度のものがほとんどです。

一方で、大型電動式は、病院で行う鼻吸い器で強力なタイプです。鼻はよく取れますが、強く吸いすぎることで、鼻粘膜や鼓膜に影響が出る場合もありますので、家庭での使用の際は注意が要ります。ご家庭での使用でおすすめは、小型電動式か口吸い式です。特に小型電動式は、楽に吸引できる点でもおすすめです。

②その他

副鼻腔炎の合併がある場合には、必要に応じで抗菌薬を使用します。

アレルギー性鼻炎の場合は、抗アレルギー薬の投与を行います。

鼻をかむ練習

鼻水を貯めたままにしていると鼻腔内の細菌が増殖し、副鼻腔炎や中耳炎をひきおこす原因となることがあります。鼻はすすらず、できるだけ出してあげましょう。

個人差はありますが、4才くらいになったら鼻のかみ方を教える時期です。

 

 ポイントは、

  • 片方ずつかむ。片方の鼻をきちんと押さえます。
  • 鼻をかむ前には、口から大きく息を吸う。
  • ゆっくり少しずつかむ。

両方一度にかませたり、力いっぱいかませたりすると、耳を痛めることがあります。

あわてず、ゆっくり、少しずつかみ残さないよう心がけます。

鼻かみ,女の子

鼻がつまってかめない時は、温かいタオルを鼻の付け根に5分くらいあてると鼻のとおりがよくなることがあります。お風呂の後にかんでも出やすいです。