食物アレルギー

食物アレルギーとは

私たちの体は、「異物」が体内に入ってきた時に免疫反応が起こり、排除する仕組みを持っています。それが過剰に働くことによって、じんましんや下痢、せきなどのさまざまな症状が起こることをアレルギー反応と言います。

通常、食べ物は「異物」として認識しないようにする仕組みがあり、栄養として吸収できますが、食物アレルギーを持つ人は食べ物を「異物」と認識し、アレルギー反応を起こしてしまいます。原因となる食物や発症する量は個人差があり、個別に対応する必要があります。

食物アレルギーの種類

食物アレルギーは、症状などの特徴から幾つかの臨床型(タイプ)に分類されます(下表)。特に栄養指導が求められるタイプは、「食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎」と「即時型」の2つです。

食べた後すぐにじんましんが出たり、嘔吐やせき込みなどの早急な手当てや病院受診が必要となる症状はほとんどが「即時型」食物アレルギーにあたります。

臨床型

頻度の多い

発症時期

頻度の高い

食物

アナフィラキシー

の危険

体制獲得

新生児・消化管アレルギー

新生児期

牛乳

あり

多い

食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎

乳児期

鶏肉、牛乳、

小麦、大豆など

あり

多い

即時型

乳幼児期

年齢によって

異なる

高い

鶏肉、牛乳、小麦、大豆などは多く、

それ以外は少ない

食物依存性運動誘発アナフィラキシー

学童期~成人期

小麦、甲殻類

など

高い

少ない

口腔アレルギー

症候群

学童期~成人期

果実、野菜

など

低い

少ない

以下、主に、即時型食物アレルギーについて解説します。

即時型食物アレルギーの特徴

● IgE抗体が関与したⅠ型アレルギー反応である。

● 原因食物を食べたあと、2時間以内に症状が出現する。

● 乳児期の10%、幼児期の3~5%程度が即時型食物アレルギーを持っている。

● 保育園で問題となるものの多くがこの病型。

● アナフィラキシーは即時型食物アレルギーの重症型。

               即時型食物アレルギーの機序

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即時型食物アレルギーの原因食物

原因食物は、鶏卵、牛乳、小麦が多くみられ、乳児期には特に問題となりやすいです。年齢ごとに原因食物の頻度は異なり、幼児期には魚卵、ピーナッツ、学童期になると、甲殻類、果物、魚類などが新たな原因として多くなってきます。

アレルギー,原因食物

         全年齢における原因食物

即時型食物アレルギーの症状

全身のあらゆる臓器に症状が出ることがありますが、そのなかでも皮膚症状、粘膜症状(目、口腔粘膜)が特に多くみられます。 中にはアナフィラキシーショック(血圧が下がり、意識が低下する)となり、生命の危険を伴う場合もあります。

症状,アレルギー

アナフィラキシー

即時型アレルギーのなかで、じんま疹だけや腹痛だけなど一つの臓器にとどまらず、

 ●皮膚(じんま疹や発赤、かゆみ)

 ●呼吸器(咳、くしゃみ、ぜーぜー、呼吸困難)

 ●消化器(腹痛、嘔吐)

 ●循環器(脈が速い、血圧低下)

 ●神経(活動性の変化、意識低下)

など複数臓器に全身性のアレルギー症状があらわれるものをアナフィラキシーといいます。

「アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合」をアナフィラキシーショックといいます。

 

※症状が複数あっても、いずれも軽度の場合には、アナフィラキシーとは判断しません。

 

※典型的な食物によるアナフィラキシーは、原因食物を摂取した数分以内に起こりますが、30分以上経ってから発症する場合もあります。

即時型食物アレルギーの診断

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①  問診では食べたもの、量、調理方法、どのような症状が出たのか、摂取から症状出現までの時間経過、症状を認める前の疑わしい食物の摂取歴、症状の再現性があるのかなどを確認します。

   ※ 症状の再現性: 疑わしい食物を食べて症状が出ることが複数回あること

 

②  食物アレルギーが疑われる食物についてアレルギー検査(特異的IgE抗体検査や皮膚プリック試験)を行い、感作が認められていれば診断は確定できます。

 

③  誘発された症状が疑わしい場合、食物経口負荷試験で確定診断します。

即時型食物アレルギーの治療

正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去が治療の基本です。

 

【必要最小限の除去とは】

  • 食べると症状が誘発される食物(原因食物)だけを除去して、過剰な除去を避ける。「念のため」「心配だから」という理由だけで除去をしない。
  • 原因食物でも、症状が誘発されない“食べられる範囲”までは食べることが出来る。食物経口負荷試験で症状が誘発された食物であっても、症状を誘発しない範囲の量の摂取や、加熱・調理により症状無く食べられるものは、除去せずに摂取する。

※除去食の解除について(除去していたものを食べれるようになるまで)

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症状出現時の対応(誤食の場合など)

アドレナリン自己注射薬(エピペン®)について

  • エピペン®はアナフィラキシーの既往がある患者やリスクの高い患者に処方されます。
  • エピペン®は、医師の治療を受けるまでの間に症状の進行を一時的に緩和する補助治療薬です。
  • エピペン®使用後は直ちに医療機関を受診しなくてはいけません。
  • 保育所および学校において、緊急の場に居合わせた関係者が、エピペン®を使用できない状況にある本人の代わりに注射することは医師法違反とはなりません。
  • エピペン®が処方されている患者で、アナフィラキシーショックを疑う場合、下記の症状が一つでもあれば使用すべきです。

緊急性が高い症状

消化器の症状

・繰り返し吐き続ける    ・持続する強い(がまんできない)お腹の痛み

呼吸器の症状

・のどや胸が締め付けられる ・声がかすれる     

・犬が吠えるような咳    ・持続する強いせき込み    

・ゼーゼーする呼吸     ・息がしにくい

全身の症状

・唇や爪が青白い      ・脈が触れにくい、不規則

・意識がもうろうとしている ・ぐったりしている   

・尿や便をもらす