かぜ

かぜは、咳・鼻水・熱を主症状とする急性上気道炎のことをいいます(肺炎や気管支炎は下気道炎といって区別されます)。風邪の原因は、ほとんどがウイルスの感染であり、そのウイルスにもたくさんの種類があります。これらのウイルスによるかぜの治療は、休養と対症療法(症状を和らげる薬を使用しながら、自然に治るのを待つ)であり、すっきりと治るのには通常1~2週間かかります。薬を使ったから早く治るという訳ではありません。

かぜ症候群の原因ウイルス

かぜに占める割合(推定)

ライノウイルス

3050

コロナウイルス

1015

インフルエンザウイルス

515

RSウイルス

5

パラインフルエンザウイルス

5

アデノウイルス

5

エコウイルス

5

コクサッキーウイルス

ヒトメタニューモウイルス

不明

不明

1030


人間は、一生のうちにおよそ200回かぜをひくという説があります。半分以上は、小学生になるまでにかかると考えると、6歳までに毎年約20回かぜをひくことになります。

かぜは、一度ひくと同じかぜにかからない訳ではありません。一度かかるとそのかぜウイルスに対する抗体(ウイルスを退治する免疫物質)が体に作られますが、その後ずっと体に残るのではなく、次第に減っていきます。ですので同じかぜに何度もかかる訳ですが、かかるたびに以前できた抗体が体内ですぐに復活して、症状は軽く済むようになっていきます。

一方で、1歳前後までにひくかぜは、ほとんどが初めてのものばかりで、体はそのかぜに対する抗体を持っておらず、症状が強く出やすかったり、治るのに時間がかかったりします。保育園に行き始めの子どもが、通いだして2~3か月の間、鼻水や咳がずっと続くということがよくあります。これは、複数のかぜに繰り返してかかっており、どれもが初めてのかぜばかりで治るのに時間がかかるためです。よくお母さん達には、「かぜをひくことで、免疫をつけて強くなっている途中だと考えてください」と説明しています。

治療

かぜ治療の基本は、対症療法になります。鼻水や咳、痰、発熱などの症状に対して、それぞれを軽減させるお薬を使います。ただし、日中の軽い症状程度で、夜はぐっすり寝れており、元気で食欲もあれば、あえてお薬を飲む必要もありません。

症状が出始めてから次第にピークに達して、そしてピークを過ぎると徐々にましになっていき、最終的には完全に治る。これが、おおよそ1~2週間の中で起きるのが通常のかぜの経過です。このかぜの経過が、お薬によって短くなることはほとんどありません。かぜ薬の目的は、治るまでの間のつらい症状を軽減して、体への負担(寝れない、飲めない、食べれない等)を少なくしてあげることです。ですので、体の負担がない場合にはお薬の必要性もないという訳です。

お薬以外の治療では、やはり、十分な睡眠と栄養がとても重要です。

その他、鼻水がある場合には、たまると呼吸苦や不眠、せき込みにつながるため、こまめな鼻吸引が有効です。また、空気の乾燥が睡眠中のせき込みの要因となることもあるので、部屋の加湿が有効な場合もあります。

かぜと抗生物質

かぜ,抗生物質

これまでに、咳・鼻や熱がある場合に、抗生物質(抗菌薬)を処方されたことがあるかもしれません。実はこれは、間違った治療である場合が多いのです。抗生物質は、細菌(ウイルスとは別物)の感染を治療する薬で、ウイルスが原因のかぜにはまったく効果がありません。

咳・鼻・熱を起こすものの中には、細菌(溶連菌やマイコプラスマなど)が原因のものも一部あり、診察や検査からこれらと診断した場合のみ、抗菌薬を使いますが、その他のかぜには抗生物質は無効です。かぜに対して抗生物質を使用する場合、ほとんどが不要な薬を不適切に使用していることになります。

細菌,抗生物質

では、抗生物質を不適切に使用すると、どういった問題があるのでしょうか。もっとも多くみられるのが、正常な腸内細菌叢を乱し、下痢や腸の不調を来すことです。そして、より深刻なのは耐性菌の問題(抗生物質の効きにくい細菌が生まれたり、増えたりする)です。さらに、重篤なものも含めて、さまざまな副作用の機会を増やすことにもつながります。

医療が進んでいる我が国において、なぜか風邪に不要な抗生物質を乱用するという誤った風習が以前より根付いており、これは世界的に見ても大きな問題となっています。

当院は、子どもの体を守る小児科医という立場からも、抗生物質を適正に使用することを心がけており、かぜに対する抗生物質の使用は、原則として行わないよう注意しております。

注意点

どんなかぜであっても、悪化してこじれると、気管支炎や肺炎などを引き起こす場合があります。高熱が2~3日以上続く、咳がさらにひどくなるといった場合には、再診するようにしてください。