風邪や体調不良時、あるいはストレス時に、子どもが頻繁に嘔吐を繰り返すことがあります。下痢は見られず、胃腸炎でもありませんが、腹痛や頭痛もみられ、かなりぐったりした状態になります。しかし、点滴で水分と糖分の補給を行うと嘔吐が落ち着き、見違えるように元気を取り戻します。
これは、子どもによくみられるアセトン血性嘔吐症の典型的な経過です。
別名、「自家中毒症」とよばれることもあります。
通常、体のエネルギー源として、まず初めに使われる栄養は糖質です。私たちは、毎日の日常生活に欠かせない体や脳のエネルギー源である糖質を、1日3食の食事でしっかりと摂取しているわけですが、食事の摂取量が落ちると、当然、糖質摂取量も低下します。エネルギー源として必要な糖質の摂取量が不足すると、体に蓄えられている糖分を栄養源として使い始めます。しかし、子どもは、体に蓄えられた貯蔵糖がそもそも少なく、すぐに枯渇します。そうなると次は脂肪が分解されてエネルギー源として使われるようになるのですが、その時に分解産物としてできるアセトンという物質が、腹痛や嘔吐などの症状の原因となります。
このように、この疾患はそもそもの原因としては、糖質の摂取不足から始まるのですが、きっかけになる様々な状況が知られています。比較的多い例を挙げます。
● 旅行や引っ越しなどの環境的変化
● 行事(運動会、発表会、遠足)などの精神的な負担やストレス
● 体の動かし過ぎなどによる疲れ
● 風邪やインフルエンザ、胃腸炎などの感染症
● 夕食を取らずに寝ること
症状が軽く、経口摂取が可能な場合は、糖質(ジュースやスポーツドリンクなど)を少量ずつ、30~60分おきに飲ませることで落ち着きます。
頻回の嘔吐で経口摂取ができない場合には、脱水をきたしていることも多いため、点滴により水分と糖分の補給を行います。多くの場合、点滴により症状は劇的に改善し、経口摂取が可能となります。
食が細く、やせ型体型の子どもにこの疾患は見られることが多く、起こしやすい子は何度か同じ状態を経験します。これらのお子さんは以下のことを特に注意をしてください。
● 空腹時間を長くしない(夕食時間を遅めにする) ● 普段より炭水化物、蛋白質を十分にとることを心掛ける ● 特に行事の後や感染症罹患時には、糖質不足にならないよう栄養摂取に努める |